三カラ四ヌケ五ヘカヘル

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河原町から帰り道。
 
大好きな高瀬川の流れに沿って、私は自転車をゆっくり ゆっくり漕ぐ。
 
川の流れる様子は、それを囲む世界に合わせて、包まれるように、寄り添うように、
まったく色を、音を、においを、変えてゆく。
 
鴨川と平行にただ浅く狭く、流れるつつましやかな高瀬川のあかり道。
鴨川ほどつよく主張するこなく、景色や人の一部となり、脇役に徹するその姿のいじらしさに、私はたまらなく歓喜をおぼえる。
 
歓楽街と人の波をくぐり抜け、閑静な民家と店屋通りを通過、私は水面の光の反射を眺める。
自転車のペダルの上に立ち上がり、体を高くにもっていく。
目をこらす。カラカラカラと間の抜けた車輪の音。
 
つかず離れず この大きないわゆる世間というやつを沿いゆき渡るのは、男と女。
建物の間に揺れる行灯は、夜という空間にぽっかりあいた、本能の穴ぐらだ。
 
生きる、そこに理由がないように、
流れる、そこに理由はなく、
北から南へ、ただ川は流れ、
川と共に私はゆく。
 
アッという間に 五条の三月、午前四時。