もう何ヶ月も前のことだけど、
同窓会ってやつに行ったんだ。
久しぶりに実家に帰った私は、かつてなく自分の生まれ故郷を懐かしくも思ったし、新しくも思っていた。
夜のだーれもいない、駅から家までの距離。
人や明かりが邪魔くさいくらいいつも ガヤガヤと近くにあるのが当たり前の、いわゆる「都会」に慣れてしまった私は、
やっぱりその故郷の静まり返った、真っ暗闇の道に、かつてない恐怖を抱いてしまって、歩かれなかった。
久しぶりの四日市は、むかし私が電車に乗ってあそびに行っていたあの頃と、変わらないのに、何だか寂しく見えた。
集まった場所には、見たような見てないような顔が沢山いて、
私は久しぶりに会う、らしい、かれらの顔が不思議だった。
でも、嬉しかった。
なんとなく大人になったとき一番会いたい と思っていた当時の学級委員長は、残念ながら出席してなかった。
飲み物を持って席につく私を指さして、別段ひそひそもせず、数人で集まったグループのやつが、その中に向かって 言った。
「あー、レズの子かあ」
ああ、そうか。わかった。
くっだらない。ここは、何も変わっていない。
いっさい変わらない。
狭い、狭い、これだけの世界だった。
だから私は、この町を出たんだ。
飛び交う、どうでもいいうわべの言葉の数々。
噂話と、それにまつわる、暴力的なまでにうわっつらの皮をかぶった、言葉と、態度。
私はそれに抗うつもりも従うつもりも、ないし、なかったんだから。
にやけた作り笑顔に、
反発したい ただ反発したい私がいた。
ろくに騙せもしない半端な、嘘つきたち。
私はそれを何よりも嫌った。
そして、私もそのうちの一人でしかないという事実を、何よりも呪ったんだっけか。
場所じゃない、そのことは私もよくわかっている。
だから、何も変わらないし変わっていない。
でも、どんなに時間が経って、忘れられていっても、
無かったことにはできない。
誰の権利も、どんなに沢山の人間の「普通」も、関係ない。
私はあの子を、愛していたよ。