ぼくの話をきいとくれ

昨年の末に、ひどい風邪をひいて、気管支炎をこじらせました。
息が自由にできないほど、えんえん咳が出るもので、
夜はねむれません。朝は起きたらすぐ、咳の発作がおこって
オエーってトイレでえづくまでを何回も繰り返して やっとかろうじてバスに乗れる状態になります。
その頃はまだ京都に住んでいたので、電車の中でも、
一時間の通勤の時間中に二回ぐらい発作が起きて、
ゴホゴホ、おええ、っていいながら、なんとかやり過ごしてました。
頓服薬として、ふつうの4倍ぐらい量の咳止めシロップを
常に飲んでいる状態で、あたまは酸素不足もあって常に朦朧としてました。
息をするのがしんどい。息をすれば、咳が出る。
咳が出ると、体力を奪われる。
毎日ものっっすごく疲労していて、
それでも、咳が出て起きてしまうから、うまく寝れない。休まらない。
寝れない。朝はくる。体がなおらない。
 
重い病気を体験している人からしたらそんな大したことないやんけ、とか
って思うかもしれませんが
私にとっては、ほんとに、もう、だめならだめでいい、って思ってた時期でもあって、
 
息をゆるされないなら、とまればいい。
やるならやれ。
もう、望みなんてない。望むこともない。
そう思ってたんです。 よ。
 
 
でもあの日、ライブを見に行った。
 
久しぶりに、イヌガヨをみた。
ロックンロールのあいだ、
うそみたいに、咳が止まった。
うそや、って思って、私は息を吸った。おおきく吸った。
タバコの煙の充満した、ライブハウスで。
私は深呼吸した。息をする、ということを思い出したみたいに。
信じられないでしょうね。
信じられなかったよ。
 
薬なんていらない。
押し付けの、幸福なんていらない!
おれに必要なのはこれなんだ、
ロックンロールが、おれに息を許してくれた。
ロックンロールが、おれに、生きてていいよって言った。
 
 
そんで、わかった。
 
「いつか」なんて、こない。
 
絶対こない。
絶対絶対絶対絶対絶対、こない。