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「手紙を書いた。部屋の中で帰りを待つ。
それが最後の手紙になった。
今日は機嫌が良い日、私は嬉しい。
洗濯物干してよ、と言われ、喜んで干す。
お寿司を食べに行く。スーパーで買物をして帰る。
ぶどうゼリーをあーんして食べさせてもらう。
パソコンをいじる後ろ姿を抱きしめる。
まんざらでもない様子。
流してくれる音楽は、私が彼に宛てた歌。
「そして僕は途方に暮れる」
「裸の君の笑顔をもう一度メチャクチャにしてやりたい」
それらを、流しながら二人で一緒に歌う。
少しだけ抱き合う。すぐに、ハイおしまい!と止められる。
アラームが鳴る。帰らなくちゃ。
でも、帰りたくない。どうしても帰りたく、ない。
抱きつけば、そのままでいてくれる。
どんなに一時的な愛情でも、私は、ほんのそれだけでも、
最後の最後まで、手放す決断が、できなかった。
次に起きたとき、終電が無くなっていた。
起こしたほうがよかったかな?って彼は言う。
ううん、大丈夫。私はこたえる。
自分で自分に傷をつけていることが、わかっている。
それでも、その言葉が。起こさずにいてくれたことが。
なんてみっともない、みじめな、それでも唯一の、
私の生きる、喜びだったことだろうか」