精算 仮

2010年10月末、私は何も知らなかった。
それから訪れた地獄のような日々、私にとって自業自得の日々。
私はたくさんのことを知った。
たくさん人間について知った。
新しい当たり前と、気づかなかった自分自身について。
何度も何度も死のうと思ったし殺そうと思った。
何度も何度もすがりつこうとしたし、振り解かれれば憎しみが爆発した。
かなわないならやめようと思った。
愛されないならやめようと思った。
それでも生きている。
それでも誰かを愛したいと思っている。
 
私がリビングで泣いていたのを、
「ほら行くよ」って玄関まで連れていってくれたあの手。
 
あれが、愛だと思う。
 
忘れない。忘れない。
人間は、忘れることができる。
あの身を焼くような憎しみや、激しい恋情や、嫉妬。
ぜんぶひっくるめて私であり、私は人間である。
 
「スマートに」なんて、「効率よく」なんて、「お互いのために」なんて、みんな言うけれど、
このドロドロした感情のポテンシャルを絶対持っていて、
時にそれが噴出してしまって、そんな自分に苦悩し、葛藤し、
誰かのためにって言いながら、為りたい自分に為る為に、堪え続けるのが、
人間であってほしい。すべての人間で、あってほしい。

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