失物手近にあり出る

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死んだ人に会う。のっぺらぼうを見ているみたいで気味が悪かったけど、
そこに辛うじて残っている懐かしい何かを愛することが私にはできるようだった。
さて愛することも憎むことも他人任せの気分は如何?
いいヤツを演じてみたところで人間の感情が消えるわけではないことを
私は知っていたのですが、気が向いたので少しだけ演じてみせようと試みた。
あなたの分まで不必要なものを背負う以上、やっぱり重たくなってしまうなア。
なのに、私とあなたの間には何も無いんだ。だってあなたは、幽霊だから。…ごめんね。
死んだ人。かわいそうな人。だから私はその分だけは愛そうとすることができるんだけどもね。
 
少しだけれど、あなたの為に歌を歌ってあげよう。二人で歌う歌は、とても悲しくて、とても懐かしい。
長い終わりをうたう歌は、遠い、はじまりの歌であるべきだ。
「まだ生きて果てぬこの身なら、罪も罰も我と共に在りて」。
ああ何時まで経っても楽にはならないねえ。
 
どうだい、誰にも気づかれないようなことは?
転がる石のようなことは?
 
歌をうたって、頭の中身をすくい出す。
じきに陽は落ちる。台所はいまだ片付く気配を見せない。
もらったギターアンプ、まだ鳴らしていない。
それよりも、残された形跡を、見えうる限り全て消す。
「不必要な思いは これ以上しなくていいのだ。」
 
鳥は籠から放たれた。
ただ、そこを離れず居続けることも出来るのだ。
誰もあなたの選択肢を奪えないし、
だから誰もあなたの責任を負ってはくれない。
自分で、決めんだよ。
だから、苦しいんだ。だから、意味があるんだ。だから、そこに火が灯るんだ。
 
あんたの人生に、あんたはいるか?
 
私の音は、私のものだ。
だから、あなたの音も、あなたのものの、はずだ。
それに気づけば、きっと私なんかに頼らなくても生きていけるさ。
そのときがいつか、来るよ。 大丈夫さ。
だから、私の音が聴こえないところへいっても、
君は歌い続ければいいんだよ。

ちょいウツ

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「静かに目を閉じる」
「陽が落ち途方に暮れる」
言葉にするといかにもサラリと軽い歯ざわりにしかならない短いセンテンスを、
ひとつひとつ、噛み締めるように、ゆっくりゆっくり実行して みる。
 
「じゃあね」 と「またね」。
その 悲しそうな目はやめたまえ。何だよ、私が何かしたかよ!
 
よく寝た。
 
久しぶりにご飯を炊いた。残りもののお弁当のおかずの魚とかと一緒に食べる。
お布団を干す。洗濯物がいっぱい片付いてグッド。
 
マンションの管理会社のお兄さんが、急に 部屋に火災報知機を取り付ける作業に来たので、
(本当は前からなんども電話もらってるんだけど 私が放置してた。つまりこれが本当の火災放置ry)
あーどうぞーって言って部屋に上がってもらったところで気がついたんだけど、
ああ 部屋がひどい、、そして寝る前に食べていたミルクチョコレートが(それもそれでひどい)パジャマのズボンにべったりついている、、意味不明、、
まあ… しょうがないっか★
 
心を無にして、お兄さんとの沈黙の時間をやり過ごした。
帰り際のお兄さんはなんか怯えた目をしていた。何だよ、私が何かしたかよ!