残りのひび

キョート。
すばい路地裏にであってしまって30ぷんほど舐めるように眺めまわし練り歩いたのち、おしゃれすぎるカフェ屋さんに濃厚チーズケーキの文字があったからつい入って、メニューに「マッキャート」って書いてあってなんかかわゆかったので
笑顔でそれとセットで注文して、いただいた。
でもまだまだ夏本番ではなく常温生活をこのむ私は(ようするにそこまで金持ちな生活に慣れていないとゆうわけかなと思っているのだが)、電車も、大体の飲食店内も、クーラーついてるのがさぶくて結構すぐに店を出る。

そして吸い寄せられるように高瀬ちゃん(高瀬川)を心ゆくまでたんのうし、
気づいたらまあ だいたいいつものコースをあるき、七条鴨川にしゅぽっと  でた。

陽が落ちるまえの青い夕暮れ。
歩いたり走ったりして流れてゆくひとと、かわ、くも、せかい、じかん、をながめていた。
すると今日まで気づかなかった、鴨川のメインの人通りとは逆側の川べり、すこしだけある河川敷へ、降りられるちいさな階段があった。

ああギターを持ってくればよかったなと、ぼくは京都へもどって来るたびにけっこう思うのだ。
だから明日はきっとギターをかついで来るだろう。

たくさんのことが、
あるたびにここへ来たっけか。

別段、こようと思ったわけじゃないんだ、
ただその通り道にここがいつもあっただけなんだ。
でも、会いたくてふるえるようなやわさより
会いにいってしまうわがままや、なぜだか会ってしまう必然性、を、
ぼくも信じたいと思う。

一日中、ご飯を食べたいと思わなかった、この季節はどうもだめなのかもしれない。
食べなきゃなと思っていろいろ探したけれど、食べたいものがどーしても見つからなかったのだ。
不思議と、お腹が減ってぐー、というあのせつない気持ちにもさっぱりならなかったから余計困った。

なんだかそんな日はべつに無理してご飯とか食べてもしょーがない気もした。
食べたいと思ったときにまた食べればいいのかなと。まあ戻し方には気をつけつつ、水分はちゃんと補給しといて、とかさ。
(まあそのあとチーズケーキとか食べましたが)

夜に歩いて銭湯へ行きました。
率直に言って、なんだかとても  さみしかった。

でも僕にはもう、それをどうにかする手段が、手元に残されていないのだった。
 
 
 
・・・

2013/03/01 おとへ
(書き始め2013/2/13)
 
 
頭んなか、鳴り止まないうたがある。声をはりあげて、辿らずにいられない、うたがある。
 
ぼくはいつから、こんなに君のことが好きになっていたのだろう。
こんなに近くに、ずっとずっと君がいた。君なしでは、生きててもつまらないって思うくらいになってしまってた。
 
三歳ぐらいの頃、家のスピーカーの前で踊ってた時からだろうか。
夜のトイレが怖くて、おばけなんかないさーって歌いながら、勇気をもらって廊下を歩いた時からだろうか。
合唱のテストの時、無意識に持ってた楽譜をめいっぱい左右にふって、リズムにのりすぎてた時からだろうか。
初めてのカラオケでジュディマリの「そばかす」を、何回も聴いてめちゃめちゃ練習して歌った時からだろうか。
音楽の時間、リコーダーがめちゃくちゃ楽しくて、クラスの中で一人だけ一番難しい曲を選んで、テストでSもらった時からだろうか。
吹奏楽部でいろんな打楽器を触って、それがみんなの音とまじわって一つになった時に、震えるぐらい嬉しかった時からだろうか。
失恋した時に、夕暮れの高架下を泣きながら聴いた別れの曲に、どうしようもなく救われた時からだろうか。
浪人中に、友達から借りたコーネリアスの左右にふれるヘッドフォンミュージックに目ん玉食らった時からだろうか。
大学に入って、なんとなーくで選んだバンドサークルで、たくさんの人と、音楽に出会った時からだろうか。
就活の、最終面接のとき、「夢はバンドをやり続けることです」って言い切って、「二足のわらじを履くのはむずかしいぞ?」って面接官に言われて、「それでもやってみます」って言って、唯一内定をもらった時だろうか。
本気で音楽をやってる人らに、バンドやりなよ、ぜったい音楽、すきじゃん。って言われた時からだろうか。
何もかもなくして、死にそうにつらい時、希望がもう見つからなかった時、とてもとても優しいうたに、出会った時からだろうか。
咳がで続けて息ができないくらいの気管支炎にかかった時、ロックンロールのあいだだけ、呼吸が自由にできら時からだろうか。
君のうたに触れた時からだろうか。
君とあの部屋でうたった時からだろうか。
どうしようもない気分のとき、川でピアニカをふいた時からだろうか。
河原でみんなで楽器持ち寄って太鼓をたたいて遊んで喜ばれたときからだろうか。
 
スタジオから出たらもう日付が変わってて、切るように冷たい空のした、スネアとペダルをかかえたチャリで坂登って坂下って走るたばこくさい帰り道がなによりなにより、大好きだった!!
 
おとよ。
初めてバンドをはじめたあの頃、怖いものなんて なにもないと思っていたよ。
 
おとよ。いつしか君のつなぐ全部に、その美しさに、もうしんでもいいって思えるくらいの瞬間に、出会い続けたぼくはもう、麻薬みたいに、中毒になっているんだろうか。
 
おとよ、時間の芸術よ。
僕はずっとずっと、きみと一緒にいたい。もっともっと近くへゆきたい。
君しかいらない、なんて思わない。それは私の望みではない。
ただ、わたしのこの命をけずって、けずって、けずって生まれる、おとよ。
楽しいばかりじゃなく、
苦しいばかりでもない。
ただ、きみとともにいたい。
私の残った寿命のなかで、
許されるかぎり多く、
許されるかぎり自然に、
きみのなかにいたい。