退去の最終お掃除をするため、枚方へ。
前回来た時よりかは身ギレイな私、いえ、わたくし。
坂の途中の道路工事が まだ続いていた。
現場の交通整理をしているおっちゃん達。
通りすぎようとした時、ニイちゃんが一人、おっちゃんに怒られていた。
「何やってんだ! …お前、向いてないわ。ガードマンやめろ」
あの仕事はガードマン、というんだな。形容するいい言葉がこれまで見当たらなかったので助かる。
春の空気がただよいはじめている、湿気た、深夜の舗装道路。
キツイ言葉を投げつけられたニイちゃんは、青ざめたようすで黙りこんで、フラフラしていた。
フラフラしているもんだから、また怒られていた。
ああ、あれは 私だ。
久しぶりの枚方の家。
訪れるごとに、無機質に、「ただのタテ物」に姿を変え、自然状態に還っていくそのさまを、
毎回五感で感じ取ってゆかなければならないのはどうしても。どうしても。慣れない。
においがない。温度も残ってない。
私はここにはもう、いないんだ。
それでも確かに、あの時間はあった。あの暮らしはあった。
ここに私は住んでいて、あなたと一緒に、毎日を生きていた。
よね。
雨が降ってきた。
歌が歌いたい
悲しくて、やさしい歌が。
不確かな未来を あやふやな時間を
擦り合わせるたび 僕ら
少しずつ すり減ってったんだ
赤色を黒で塗って
真白な砂をばらまいた
僕らそれを 何度繰り返したっけ
(彼女は泣いていた、笑っていた(仮)/hiyoko より)
終電で帰る。京阪電車は遅れている。
あなたがあの日、自分を守るために仕方なく切り捨てた誰かが、泣いているのよね。
いびつな感情、関係
人間